マイクロソフトの Surface Pro X は Windows 10 ARM ベースの 2in1 デバイスです。
LTE にも対応しており Wi-Fi ネットワークとの使い分けでインターネットへの常時接続が可能です。
マイクロソフトが Qualcomm 社と共同開発した Microsoft SQ1 プロセッサーの搭載でノートPC としてのモバイル性や生産性などを最適化しているところもポイント。
ただ、Windows 10 ARM ベースのデバイスなので、64 ビット (x64) アプリが動作しないことはチェックが必要です。
- Qualcomm 社と共同開発した Microsoft SQ1 プロセッサーに Windows 10 ARM ベースを搭載し、ノートPC としてのモバイル性や生産性などを最適化
- LTE 対応でインターネットへ常時接続できる(nano SIMカードと eSIM の利用が可能)
- 高精細で色鮮やかに描画できる液晶ディスプレイ
- 充電式のペンを収納できるタイプカバーを選べる
- Office Home & Business 2019 がインストールされている
- インストールするアプリに注意が必要(64 ビット (x64) アプリは動作しない)
【 目 次 】
レビュー内容は 2020年3月18日時点のものです。
この記事では日本マイクロソフトからお借りした実機を試用してレビューを実施しています。また、当サイトはマイクロソフトアフィリエイトプログラムを利用して収入を得ています。
スペック構成
Surface Pro X のおもなスペックです。
OS | Windows 10 Home |
CPU | Microsoft SQ1 |
メモリ | ■8GB LPDDR4x 3733Mbps RAM ■16GB LPDDR4x 3733Mbps RAM |
ストレージ | ■128GB SSD ■256GB SSD ■512GB SSD |
ディスプレイ | 画面:13 インチ PixelSense ディスプレイ、解像度: 2880×1920 (267 PPI)、アスペクト比:3:2、タッチ: 10 ポイント マルチタッチ、輝度:450ニット |
グラフィックス | Microsoft SQ1 Adreno 685 GPU |
ワイヤレス | Wi-Fi 5: 802.11 ac 互換、Bluetooth 5.0、Qualcomm X24 LTEモデム、サポートされる LTE バンド: 1, 2, 3, 4, 5, 7, 8, 12, 13, 14, 19, 20, 25, 26, 28, 29, 30, 38, 39, 40, 41, 46, 66 |
バッテリー駆動時間 | 最大 13 時間 (通常デバイス使用) |
本体サイズ(W×D×H) | 287×208×7.3 mm |
重量 | 774 g |
本体カラー | ブラック |
Surface Pro X は メモリ、ストレージのスペックにより以下のモデルがラインナップしています。
■8GBメモリ / 128GB SSD
価格:142,780円(税込)
■8GBメモリ / 256GB SSD
価格:164,780円(税込)
■16GBメモリ / 256GB SSD ← レビュー機
価格:204,380円(税込)
■16GBメモリ / 512GB SSD
価格:241,780円(税込)
※価格はマイクロソフトストアの価格
レビューでは「16GBメモリ / 256GB SSD 搭載モデル」を試用しています。
外観チェック
洗練されたスタイリッシュなデザイン
Surface Pro X は Surface Pro 7 と同じく洗練されたスタイリッシュなデザインです。
本体の素材はカーボン コンポジット(炭素繊維複合材)、軽くて頑丈な素材です。手で触れた感触はサラサラとしていて質感も良好、高級感のある仕上がりです。
指紋や皮脂の跡が若干目立ちやすいのは残念ですが、こまめに手入れすれば気持ちよく使えます。
キックスタンド(ヒンジ)は Surface Pro 7 と同じです。(最大角度はおそらく Surface Pr 7 と同じ最大 165度)
キックスタンドを最大に開いた状態
Surface Pro X はファンレス構造のため排気口がありません。
ファンレス構造は駆動音がしないので静かな環境に最適
インターフェースは少ない
Surface Pro X のインターフェースをチェックします。
■左側面
①音量調節ボタン
②USB 3.2 Gen 2 Type C
■右側面
③Surface Connect
④電源ボタン
Surface Pro X に実装されているインターフェースは少ないです。
とくに、Surface Pro 7 で実装されている ヘッドセット ジャック や microSD カードスロットが実装されていない点は残念なところ。必要に応じてオプションの Surface ドックや サードパーティー製の USB Type-C ハブなどでの対応となります。
スピーカーはディスプレイ面の左右両端に実装されています。
矢印の指すところがスピーカー
(場所を分かりやすくすために照明をあてています)
nano SIMカードと eSIM の利用が可能
Surface Pro X は LTE でインターネットへの常時接続が可能で、SIM は「nano SIMカード」のほか「eSIM」を使ったデュアル SIM に対応しています。
eSIM は iPhone XS や iPhone XR 以降でも採用されており、通信事業者のモバイル通信プランを Surface Pro X に設定すれば利用できる仕組みです。国内では nano SIMカードを使い、海外出張のときなどに現地のデータプランを eSIM に設定して利用するような使い方が可能です。
nano SIMカードのスロットはキックスタンドを開いた本体背面側にあります。
付属のピンでカバーを開く
nano SIMカードスロットのほか SSD も内蔵している
Surface Pro X でサポートされる LTE バンド
1, 2, 3, 4, 5, 7, 8, 12, 13, 14, 19, 20, 25, 26, 28, 29, 30, 38, 39, 40, 41, 46, 66
顔認証カメラを搭載
Surface Pro X のディスプレイ側 内蔵カメラは Windows Hello に対応した顔認証カメラです。(5.0 メガピクセル)
認証精度は良好で、顔認証情報を登録しておけばかんたんに Windows にサインインできます。
背面側にもカメラが内蔵されています。(10.0メガピクセル オートフォーカス付き、1080p Full HD ビデオ対応)
矢印の指すところが背面カメラ
薄くて軽い!
本体の大きさのイメージです。本体の下に A4コピー用紙をおき、本体の上に B5版ノートを載せています。
ピンクの点線が A4コピー用紙
本体の高さを CD ケース(通常サイズ:厚さ 10mm)と比較します。
上の画像が本体のみ(実測値:7.2mm)
下の画像はタイプカバー装着時(実測値:14mm)
以下は Surface Pro 7 との高さの比較表です。(実測値ベース)
Surface Pro X | Surface Pro 7 | |
---|---|---|
本体のみ | 7.2 mm | 9 mm |
本体+タイプカバー | 14 mm | 14 mm |
本体や電源アダプターなどの重量を実測します。
以下は Surface Pro 7 との重量の比較表です。(実測値ベース)
Surface Pro X | Surface Pro 7 | |
---|---|---|
本体のみ | 774 g | 789 g |
タイプカバー | 292 g (ペン込み) |
304 g |
電源アダプター | 217 g | 225 g |
電源コード | 71 g | 71 g |
本体は薄くて軽くて持ち歩きがラクにできます。
電源アダプターの最大出力は 65W(Surface Pro 7 と同じ)、その大きさは手のひらに収まるサイズです。
ディスプレイのチェック
高精細で色鮮やかに描画できる液晶ディスプレイ
ディスプレイは高輝度で高精細、描画される映像も色鮮やかでキレイです。
表示される文字もクッキリとして見やすいです。
映り込みはそれなりにある
ディスプレイの映り込み具合をチェックします。
ディスプレイは光沢液晶なので映像が色鮮やかでキレイに見える反面、映像によっては若干の映り込みを感じるかもしれません。
広い視野角
視野角を確認します。
正面
右側 ディスプレイ面から30度の角度
上側 ディスプレイ面から30度の角度
水平方向、垂直方向ともに視野角は広く、斜めから見る映像も鮮明でキレイです。
タイプカバーのチェック
タイプカバーはオプションで別売となりますが、キーボード入力デバイスとして Surface Pro X の使いやすさが格段にアップしますし、持ち歩くときも Surface Pro X 本体の画面をキズや衝撃からカバーしてくれます。
また、Surface Pro X のタイプカバーは Surface スリム ペンが付いているものもラインナップしています。
なお、レビューで試用しているタイプカバーは Surface スリム ペン付きです。
標準的なレイアウトでタイピングしやすい
タイプカバーのキーレイアウトです。
タイプカバーのキーレイアウトは標準的で扱いやすいです。
なお、Surface Pro 7 のタイプカバーを使用することはできません。(接続部分の形状が異なります)
キーピッチ(キートップの中心から隣りのキートップの中心までの距離)は実測で 約19mm。
キーストロークは深めでシッカリとした打鍵感があります。
タイプ音は「タッタッ」という音で比較的静かです。強めにタイプすると若干たわむ感じがありますが気にならない程度です。心地良いタイプ感で快適にキーボード操作ができます。
キートップの表面はほぼフラットな形状。サラサラとした感触で質感も良好です。
キーボードにはバックライトが搭載されています。
キーボード・バックライトは明るさを3段階で切り替え可能です。
[F1]キー押下:点灯(暗)→点灯(中)→点灯(明)→消灯
パームレストは Alcantara 素材のシットリとした感触で質感も良好です。
なお、Surface スリム ペンが付いていないタイプカバーは Alcantara 素材ではないようです。
スベリもなめらかで反応の良いタッチパッド
タッチパッドはクリックボタンが一体化したタイプです。
タッチパッドはなめらかなスベリで手触り感も良好です。指2本あるいは3本を使ってのジェスチャー操作もスムーズで扱いやすいです。
タッチパッドのサイズ感
Surface スリム ペンはなめらかなタッチで書きやすい
Surface スリム ペンはなめらかなタッチで描きやすいです。
スリムペンは傾き検知や筆圧検知に対応しています。筆圧の段階は不明ですが、繊細なタッチも可能なくらいの感度です。
スリムペンは充電式でタイプカバーの収納スペースに置くと自動的に充電してくれます。
インストールするアプリに注意が必要
Surface Pro X の OS は ARM ベースの Windows 10 のため、動作できるアプリケーションには以下のような制限があります。
32ビット(x86) | エミュレートで動作可能 |
64ビット(x64) | 動作不可 |
ARM64 | ネイティブで動作可能 |
インストールプログラムが 64ビット(x64)の場合のエラーメッセージ
実行プログラムが 64ビット(x64)の場合のエラーメッセージ
インテルや AMD などの CPU が搭載された一般的な Windows パソコンでフツウに動くアプリが Surface Pro X では動かない場合もあるので注意が必要です。
もちろん、Surface Pro X にプリインストールされている Word や Excel などのオフィスソフトはネイティブで動作するので、オフィスソフトや Outlook でのメール、Microsoft Edge を使ったブラウジングなどをメインで使うなら Surface Pro X の選択もアリといえます。
ベンチマークによる性能評価
ベンチマークによる性能評価は実行できるアプリに制限があるため、以下の性能評価を行いました。
比較項目 | 使用するベンチマーク |
---|---|
CPU性能 | CPU Mark (PassMark PerformanceTest) |
ドラゴンクエストX | |
ストレージ性能 | CrystalDiskMark |
バッテリー | BatteryInfoView(バッテリー残量測定用) |
CPU性能
CPU性能は CPU Mark(PassMark PerformanceTest) のベンチマークスコアで評価します。
Surface Pro X ではエミュレートモードで実行しているためスコアは若干低めに出ています。
CPU 単体での性能は、おそらく Core i3-10110U に近いレベルと思われます。
■CPU Mark(PassMark PerformanceTest)
CPU Mark | |
---|---|
Core i7-1065G7(平均値) |
11607
|
Core i5-10210U(平均値) |
8412
|
Core i3-10110U(平均値) |
5533
|
Microsoft SQ1(レビュー機) |
4361
|
※平均値は当サイトで計測したスコアの平均
グラフィック性能
グラフィック性能はドラゴンクエストX で性能評価を行います。
こちらも Surface Pro X ではエミュレートモードでの実行ですので参考程度にご覧ください。
ドラゴンクエストX[スコア(評価)] | |
---|---|
インテル Iris Plus(平均値) |
12549
|
インテル UHD(平均値) |
6352
|
SQ1 GPU(レビュー機) |
3066(普通)
|
※最高品質/解像度 1280×720 で実施
※平均値は当サイトで計測したスコアの平均
ストレージ性能
レビュー機のストレージは NVMe対応の SSD が搭載されています。
データ転送速度(CrystalDiskMark で計測)
こちらも Surface Pro X ではエミュレートモードでの実行ですので参考程度にご覧ください。
体感的なデータ転送速度は NVMe対応 SSD 相応で高速です。
バッテリー
バッテリー性能については、レビュー機 Surface Pro X のバッテリー駆動時間と充電時間を計測・評価します。
■駆動時間の測定条件
・無線LANでインターネットに接続
・YouTubeを全画面で連続再生
・画面の明るさ:最大レベル
・音量:最大レベル
■充電時間の測定条件
バッテリー充電時間の計測は以下の条件で、充電完了までの時間を計測します。
・測定開始はバッテリー残量がほぼゼロの状態
・電源アダプターを接続し Windows を起動
・スクリーンセーバー(ラインアート)でパソコンはアイドル状態
※スクリーンタイムアウトや PCスリープは設定しない。
バッテリーの駆動時間と充電時間の測定結果は以下のとおり。
バッテリー駆動時間 | 6時間 51分 |
---|---|
バッテリー充電時間 (50%までの充電時間) |
41分 |
バッテリー充電時間 (80%までの充電時間) |
1時間 6分 |
バッテリー充電時間 (100%までの充電時間) |
1時間 37分 |
バッテリーを多く消費する条件でバッテリー駆動時間が 7時間程度なら「まずまず」といえます。
使うシーンに合わせて画面の明るさや音量を適正レベルに調整すればバッテリー駆動時間を伸ばすことができます。
なお、実際の使用にあたっては、環境や使い方などによりバッテリーの駆動時間は変動するので参考値としてください。
駆動音・表面温度のチェック
駆動音のチェック
ファンレス構造なので静か。
表面温度のチェック
本体の表面温度については、負荷のかかる処理でもタイプカバー上は Surface Pro X 本体の近くが温かくなるだけなので不快な感じはありません。
以下は平常時と動画視聴時の表面温度の測定結果です。
タイプカバーの表面温度【単位:℃、測定時の室温:24℃】
左側の画像:平常時(Windows起動後10分放置)
右側の画像:動画エンコード時(10分間の動画エンコード終了直前)
本体背面側の表面温度【単位:℃、測定時の室温:24℃】
左側の画像:平常時(Windows起動後10分放置)
右側の画像:動画エンコード時(10分間の動画エンコード終了直前)
[画像の下側がキックスタンド]
サウンド チェック
Surface Pro X には音質をチューニングできるユーティリティソフトはインストールされていませんが Surface Pro 7 と同じく高音質です。
実際にサウンドを聴いてみた印象としては・・・
■スピーカー
低音域から高音域まで音域も広く高音質。
音量を最大に近づけていくとサウンドによっては若干の音割れを感じるかもしれないが、モバイルノートとしては十分満足できる音質。
■ヘッドホン
ヘッドセット ジャックがないため未実施。
Windows の起動・再起動 時間計測
Windows の起動、再起動時間の計測結果です。
(それぞれ 5回ずつ計測し平均値を算出)
起動 | 再起動 | |
---|---|---|
1回目 | 31.9秒 | 46.9秒 |
2回目 | 32.1秒 | 46.1秒 |
3回目 | 32.1秒 | 45.1秒 |
4回目 | 32.0秒 | 43.5秒 |
5回目 | 32.2秒 | 43.0秒 |
平均 | 32.1秒 | 44.9秒 |
起動後の動作は軽快なだけに、起動・再起動に思いのほか時間がかかっている点は少し残念なところです。
実際の使用にあたってはインストールしているアプリや使い方などにより起動時間は変動するので参考値としてください。
付属品
Surface Pro X の本体ほか付属品一式です。
電源アダプター、電源コード、ドキュメント類、Office Home & Business 2019 ライセンスカードが付属しています。
まとめ
以上、Surface Pro X のレビュー記事をお届けしました。
Surface Pro X は Windows 10 ARM ベースのデバイスのため、インストール・動作できるアプリに制限がある点は注意が必要です。
いまのところ x86 系(32ビット)のアプリはエミュレートで動作できますが、最近は x86 をサポートしたアプリ自体が少なくなってきています。将来的には x64 系(64ビット)のアプリも Surface Pro X で動作可能になるよう期待したいところ。
とはいえ、Word や Excel などのオフィスソフトのほか Outlook でのメール、Microsoft Edge を使ったブラウジングなど Surface Pro X にプリインストールしているアプリをメインに使うならとても快適に使えるデバイスであることは確かです。
Surface Pro X の価格は税込14万円前半から。
※価格は記事執筆時点。
価格に見合った使い方ができるかがポイントになるデバイスといえます。
評価のポイントをまとめると・・・
高評価のポイント
- 起動中は軽快な動作でパフォーマンスも快適
- 色調のバランスが良く、色域が広い液晶(映像描画もキレイ)
- タイプカバーのキーボードは心地よいタイプ感
- ペン付きのタイプカバーで使いやすさが格段にアップする
チョット残念なところ
- x64系アプリが動作しない
- ヘッドセット ジャックが実装されていない(必要なときは USB Type-C ハブなどで対応)
ラインナップしているモデルや価格などの最新情報はマイクロソフトストアでご確認ください。
マイクロソフト Surface Pro X
税込 142,780円から